誰に「洗脳」されるのか、選びたいものだ。

また、北朝鮮拉致関連のニュースが多くなってきた。ニュースキャスターの声のトーンにとても疲れを感じる。あれでは、皆が非難する北朝鮮ニュースキャスターと同じだ。「洗脳番組」と日本のマスコミが非難する北朝鮮のニュースと同じなのだ。
もちろん拉致が許せないことなのは言うまでもないが、だからと言って、同じようにナショナリズムをあおり、一元的な報道をしてどうなると言うのだ。
前にも北朝鮮関連の報道について書いたので、くどくど書くことはしないが、
(3月10日 「報道」を疑ってみるのも良いと思うよhttp://d.hatena.ne.jp/tabeo/20060310
報道に従事している方は、できる限りの取材を行い、視聴率や世論を怯えずに、多角的な情報を発して欲しい。そして視聴者には、まず落ち着いて。それから見聞きした情報を噛み砕き、練り直して欲しい。自分の脳味噌で練った情報は、答えはどうあれ「自分のもの」になる。
テレビで見た情報のままでは、風に飛ばされやしないだろうか。自分の頭で練って、自分の心に入れよう。そうすれば、ずっと自分は重くなる。

以前、ドキュメンタリー映画送還日記」について書いた。
(3月4日「六ヶ所村ラプソディー」「送還日記http://d.hatena.ne.jp/tabeo/20060304
今、ニュースで話題になっている韓国に侵入した北朝鮮スパイを追ったドキュメンタリーだ。私もこの映画を観て初めて意識したことなのだが、北朝鮮スパイには北出身の人と、南出身の人がいる。そして、南出身であり、自ら拉致被害者でありながら南に転向しない人もいる。韓国に捕まって、何十年も南での生活をおくりながらも信念を曲げないのだ。北での洗脳が強いからなのだろうか?そうなのだろうか。
このことを、私はまだ飲み込めずにいる。脳味噌でうまく練ることができない。原因は、彼らと私は、あまりにかけ離れた経験をしてきたため理解できないからだろう。きっと、ずっと理解できないまま、私の頭の中でフワフワただように違いない。
まあ、それも良いのかもしれないと思い始めた。ムリに着地させることに意味は無い。

この「送還日記」を観た時に買った解説本を、まったく読んでいなかったので、数日前から開き始めた。少しは映画を自分なりの解釈ができるようになってから読もうと思っていたのだが、ガイドブックを読んで、理解できないことが理解できた。
なぜなら監督のキム・ドンウォンさんも、監督の友人でありガイドブック著者の森達也さん(映画監督)も、理解できないでいたからだ。同じところに引っかかっていたのには、ちょっと嬉しかったが、そもそも「理解できないことを理解させる映画」だったのかもしれない。私は彼らの手中にまんまと嵌まったわけだ。ある意味この映画に洗脳されているが、気持ちのいい洗脳だから構わない。
「理解できないこと」はムリに結論を出さなくていいのだ。ただ、自分の中で持ち続ければいい。批判しなくてもいい。怖がらなくてもいい。つぶさなくてもいい。だって、「理解できないこと」は、自分が「理解できないこと」以外の何ものでもないから。

最後に、このガイドブックの中で、森達也さんが「洗脳」について的確に表現しているので紹介したい。

文化とは、そもそも洗脳です。資本主義者は資本主義者の、社会主義者社会主義者の洗脳がある。ところが、彼らは僕らとは違うという見方を補強するために、最近は洗脳やマインドコントロールなどの言葉が便利に使われながら、インフレ現象を起こしている。重要なことは洗脳されていると言い合うことではなく、どちらが多数の人を幸福にしてくれるかの冷静な判断です。


映画「送還日記」公式パンフレット 森達也著  リトルモア p.69 
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/489815171X/qid%3D1145362914/249-3271673-0418765


ドキュメンタリー映画「送還日記
http://www.cine.co.jp/soukan