「それでもボクはやってない」

言わずと知れた周防監督の最新作です。


もっとブラックジョーク満載の映画だと思っていたのですが、静かだし、映像もフラットな感じで、真面目な映画でした。


でも、真面目と言っても堅い印象はなく、あくまでヤンワリ描いています。さすが周防監督です。他の監督があの脚本を演出したら、もっとガチガチの飲み込みづらい作品になってたでしょう。


主役の加瀬さんのポカーーーーンとした表情とか、お母さんのトボケ具合、同部屋のおせっかいなゲイキャラなんかが、深刻になりがちな内容の映画に丸みをもたせていたんだと思います。



ストーリーは、主人公が電車内で痴漢をしたとして被害者による現行犯逮捕をされるところから、第一審で判決が出るまでのお話し。
主に警察、裁判官批判です。


以前警察さんにお世話になった経験から「ああ、分かる分かる」ということも多かったです。ただ、映画では肯定的描いているところで、私が気になったことがありました。


警察や裁判官が何度も、「被害者はまだ15歳で、怖い思いをしたのに勇気を持って逮捕し、証言しているのだ」と強調しているところです。


民事裁判であれば、被害者の心理的被害なんかも影響するのかもしれませんが、これは刑事裁判です。被害者の年齢や、どれくらい勇気がある人間かなんて関係するのでしょうか?


私は法律のことは分からないのですが、、、被害者の心情で判決、刑罰が左右されてしまうのは、ある意味怖いなと思います。


もちろん、被害者をないがしろにしてはいけないと言うのは、言うまでもないことですが、被害者の年齢や主張によって判決が左右されるなら、一見同情されにくい被害者、主張しない(できない)被害者はそれこそ ないがしろにされかねません。


最近、被害者やその関係者の主張を重視する方向に進んでるみたいですが、私は、そこは慎重にした方がいいような気がしてます。


「被害者をないがしろにしない」とは、被害者の判決への希望、意見を聞き入れることではないと思うのです。被害者(そして加害者)が置き去りにされないで、裁判素人でもわかりやすく進行すること、必要な情報が開示されること、そういうことなんじゃないかと思います。


ああ、また敵を作りそうなことを書いてしまった、、、。
まあ、いいや、どうせ私はそういう人だ。やさぐれ。



ともあれ、裁判、どの立場でも関わりたく無いですね。