演劇「ハゲレット」を観ました。その2

 昨日、このブログのカウンターが妙に回りました。いつもの2倍ぐらい。それだけ「ハゲレット」の情報を求めている人が多いのかもしれない。という事で、もう少し詳しい感想を書こうと思います。

 ストーリーは「ハムレット」そのままなのですが、登場人物のキャラクターは非常に濃く、台詞もコメディー色の強い物になっています。ギャグ満載。前半はずっと笑っていました。シェイクスピア作品と言う格式の高い(と見られがちな)作品を見易く、敷居をさげてくれたと思います。ただ、ラストの方に向かうにつれて、深刻なシーンが増えてきて、心に突き刺さるような台詞が多くなってくるのですが…そこでギャグが入って爆笑が起こるのには、ちょっとついて行けないかも。。。でも、完全にシリアスにしてしまっては「ハゲレット」である理由が無くなってしまうのでしょう。楽しく観る事ができました。台詞まわしの軽快さ、分かり易すさは、演出の山田和也さんの力でしょうか?蜷川幸夫さんの作品などは、実は私はついて行けないと言うか…私の脳みその回転速度の問題かもしれませんが(笑)

 また、これまで私が見た作品に比べてですが、ちゃんと役者の演技に頼っている(?)ところが好感が持てました。私自身があまり演劇を好きではないと言う事もあって、いつもはプラスαの見所がある作品を選んでいたので比較にならないかもしれませんが、人間の演技って面白いものだと今更ながら思いました。
 以前、野田秀樹作・演出の「透明人間の蒸気(ゆげ)」をみたのですが、舞台装置が素晴らしく、ストーリーの流れとともにどんどん形を変えました。緞帳代わりの巨大な日の丸が突然舞って20世紀の物を包み込む巨大な風呂敷になったり、奥行きのある舞台を利用して、出演者を走りまわらせたり。物語も奇妙なのですが、奇妙さを引き立たせる舞台装置が印象的でした。また、同じく野田秀樹さんの「マクベス」も、おどろおどろしい巨大な城や、ワダエミさんの衣装が素晴らしかったと思います。
 これらの作品と「ハゲレット」は、ハコが違うし規模が違うので単純に比較してしまってはいけないのでしょうが、野田作品に比べて山田さんの「ハゲレト」は、正直、地味…。舞台は回転もしなければ左右に割れる事も無い。ライトもスポットがつく程度。でも、この視覚的には地味なセットだからこそ、見てる側の想像力をかき立てる演出、本来の舞台演劇の面白さが発揮されるのかもしれません。あまり多くの舞台を見ていない私ですが、はじめて「演技」を楽しんだ気がします。

 若ハゲを苦悩の象徴にしているのですが、ラストに忠実な家来であり親友であるホレーシオが、ハムレットから貰ったカツラを大切そうにしまうシーンにちょっと感動しました。周りからは「理屈っぽい!」「考え過ぎなんだ!ハゲ!」と思われながらも、民衆のため正義のために悩み続けるハムレットを、ホレーシオは理解し、尊敬し、自分も(ハゲる危険を冒しつつ)考え続ける覚悟をしたのでしょう。ハムレット死後、現れる外国の王子(だっけ?)が、3つ以上の単語が続くと理解できない体育会系アホだってのが、また笑えもし、皮肉にも感じ…。
 台詞に散りばめられたメッセージは、「悩み続け、考え続ける事は(ハゲるけど)世界を愛する事であり、大切な事なんだ。強さなんだ」といったところでしょうか。私が普段からそう思っているから、そう解釈したのかもしえませんけどね〜。