『万景峰号の真実!』

数年前に、『万景峰号の真実!』と言うタイトルで放送されたテレビ番組がありました。
確か某キー局ニュースの特番だったと思います。

放送された映像は、とても暗く、画像も荒れていましたし、時々カメラを隠していると思われる布が画面を覆いました。ナレーションも「撮影が許されない船内うんぬん」「そのベールにつつまれた船内に潜入うんぬん」。文字通りベールに隠されたカメラで撮影された映像が流れていました。

その色の無い暗い映像、おどろおどろしい音楽は忘れられません。



その映像を撮影したカメラマンは、とても撮影に苦労したようですが、私が2000年に国際交流団体の企画で万景峰92に乗船した時は、まったく問題なく撮影できました。
その番組の映像がどのような経緯で撮影されたのか、また、私の雇い主が、どういう交渉をして撮影許可を取ったのか、私は知りません。ただ私が言えるのは、私が乗船した時は、船内での撮影を制限されることは無く、下船後、映像をチェックされることも一切無かったと言うことです。



当時、この船がこんなに話題になるとは思っていなかったので、あまり船内を撮っていないのですが、船内で参加者のインタビューを多く撮ったので、インタビュー内容も含めてご紹介したいと思います。




【新潟港にて】




【乗り込み】




【デッキから】




【出航】




【“北”へ】



【デッキ】



【デッキ】



【船内】おなじみの写真




【船内】一部の参加者の雑魚寝部屋に飾ってありました。



【討論会】(雑魚寝部屋)
帰りの討論会のようすです。キャビンからあぶれた人は、この部屋で眠りました。



【食堂】



【ソフトクリーム売店
前出の番組内で、不自然にカットされていた映像があったのですが、カットされた部分に何があるのか、私は知っています。それは「ソフトクリームが売られている売店」(笑)



【分断の責任について白熱する人々】
船内では、皆、好き勝手なことを話していました。私はただ、参加者の「訪朝前の北朝鮮の印象」を記録したくてマイクを向けたのに、話しがどんどん飛躍。。。
日本と北朝鮮の間に横たわる日本海をバックに、大阪弁で議論する2人は、話しの内容とは裏腹にちょっと面白い。



【分断の責任について議論する人々】
もう一人参戦。


穏やかに何事もなく船は進み、元山港へと向かいます。





【近づく元山港】



【接岸】



【港から見える風景】



【出迎えの人々】


下船、上陸します。
今回は船の紹介をしたいので、国内の様子はまたいずれ。

復路は雨でした。
参加者それぞれの思いを胸に、日本へ。


【船内から】



【見送りの人達】
雨の中、ずっと見送って下さいました。
ニュースで「これが北朝鮮の人々だ」と紹介されるような作り笑顔や、しかめっ面だけではなく、けっこう良い笑顔をする方々ですよ。




【手を振る参加者】



【手を振る参加者】


船内では、ゲストも交えて何度も討論会が行われました。



【討論会(食堂)】



【討論会(朝日新聞記者)】
国旗国歌法案についての話しになり、
君が代天皇制をたたえる歌で日本国憲法に反していて民主主義に反している。しかし、日の丸に関しては、日本の象徴でありマークでその裏にある意味、どう意味づけをするのか、そこに問題がある。国旗国歌法の問題点は、国旗国歌そのものでは無く、強制力だ。」こんな話しをされました。「誰でも反対するのが当たり前というのもおかしい。国旗国歌法に反対することのみが正義と思うのも危険だ」とも。
こんな話しを万景峰号の中で出来ると言うことを、意外に思う人は多いのではないでしょうか。


40代の男性のインタビュー
「80年代に北朝鮮に行ったときと変わっているところも、変わっていないところもある。さまざまな物を見せるのは、社会主義体制の中では素晴らしい文化が育つと(思わせる)政治的手段なんです。」


学生のコメントは、素直で興味深く感じました。
周りのようすから、船内の雰囲気も分かると思うので映像と一緒にご紹介します。
この参加者達からは、TVやHP、印刷物等で映像を使用する許可を頂いています。でも、当時とは日本人全体の北朝鮮に対する考え方に差があるため、念のために顔をぼかしました。個人的には、ぼかしは失礼だと思うので使いたくないのですが、本人と連絡がとれない以上、これがベストだと判断しました。



【学生】
「日本のテレビで、金日成像とかみて『なんだよっ』と思っていたんだけど、実際に行ってみて、像が出来た背景や、流れがあって出来たものだと分かって、分かったことが(行って)良かった。
普通の国じゃないけど…上手く言えないけど、、、「普通」なんだなって。暮らしている人は、考えてることとか目指してるものは私達と一緒なんだなって。それが分かっていたら、話し合いの始まりにはなるのかなって思いました。」




【20代学生】
「学生交流がとても楽しくて、バスケットとかを一緒にやれて、同じ年齢の人達って、どの国でも似たようなものだなって。」「交流が深まることは良いことだけど、政治体制の違いをまざまざと見せつけられて…混ざり合ったときに、どうなるのかって言うのも不安に思いました。」
「託児所で、作った笑顔に戸惑いました。でも、変だと感じるところもあるし、そうじゃないところもあるし、、、」




【学生】
「『金正日万歳』とか、そのことしか言わないなって言うのは、行く前の印象のままなんですけど、行ってみて、そうじゃない面もあるなと分かったので。行ってみて分かったことだから、行ってよかったなって思いました。一番、カルチャーショックをうけたのは、やっぱ託児所です。あの作り笑顔は、ほんと怖かった。ただ、価値観や文化の違いって言う面もあるのかな、、、とは、思いました。これから、市民レベルで交流を含めて、いろんな情報を交換することがお互いのためかなと思いました。」



【学生】
「たった数日しかいなくて、どう言う国かなんか分からないけど、その数日の印象は、日本人にもいろんな人がいるように、あの国にもいろんな人がいるんだなと。
画一的な教育をしているのは、想像していたとおりだったけど、その中でも、個性がちゃんとあって、、、」



【病院に行った20代女性】
「町中とかも、軍事施設とかも、写真を撮ってもよかったんですよ。
(体調を壊し)病院に行ったんですけど、夜中に行ったのであんまり周りのことは分からなかったのですが、深夜に行ったにも関わらず、良くしてもらいました。感謝しています。
お昼ご飯を食べた後に、公園まで散歩したんですけど、誰もつけて来なかったし、注意もされなかったのが意外でした。
私も含めて、日本人は先入観をもっているので、いくら情報が入って来ても、自分が体験したことの無い情報はリアリティーが無い。どう捉えていくかが問題。私が出来ることは私の体験を伝えていくことかな。」



【学生】
「(印象が変わったかと言う質問に)変わりませんでした。金日成金正日がまるで神のように崇められている事。国や朝鮮労働党に対する批判が無い事。食料が不足している事。貧困である事。以上が変わらなかった事です。また、あらゆる所に金日成サンの銅像がありまして、あるところでは、お辞儀を強要させられるということがあった。これは私にとって屈辱的なものでした。しかし、建物の一歩外にでて考えてみると、戦前の日本は同じ事をやっていたというのも、自分の中で発見しました。
北朝鮮を孤立させないように、何らかの形で交流し、連携をとること、これが北東アジアの平和につながると思います。」


在日韓国人28歳】
「北から板門店に行った時に、北と南にそれぞれの国の旗が旗めいていたんですけど、僕は北に立っていて、韓国の旗を見て、『あ、自分の国だ』と思ったんです。僕は韓国人なのだと。。。
この旅行で、北に友達ができたんです。1人友達がいるだけで、その国の印象が変わるんです。北と戦争をしようなんて思わなくなる。まず、友人を作る。中に入って話しを聞くことが、はじまりなんだと。
僕は、小さい頃から北朝鮮は敵国だと言う教育をされてきたんです。日本でもそうだと思います。でも、自分が行ってみて、その教育には政治的な思想が入っていたと気づきました。これは行ってみて、両側からの意見を聞いて初めて気づいたことです。結局、片方の国のことだけを聞いていたら、気づけないんです。
でも、韓国や北朝鮮の人は行き来することができないじゃないですか?橋渡しができるのは、在日であり日本人なんです。それが、かなり大きな意味をもたらすことになる。
そう言うことから、日本人は初めて欲しい。」

このコメントをくれた彼は、在日韓国人。家族や知人には一切北朝鮮に行くことを伝えていません。小さい頃から「敵国」として北朝鮮を見てきたという彼は、顔を出さない約束でインタビューに答えてくれました。しかも、はじめに撮ったものに納得できないと、わざわざ私を捕まえてもう一度、長くコメントをくれました。「橋渡しができるのは、在日であり日本人なんです」私には重い言葉です。


【社会人30代】

「これまでは、“距離”が大きくあった。今回、行ってみることで情報を自分の中にいれることで、判断基準が一つ増えた。行ってなにが(自分の中で)変わったと言うと、何も変わっていない。」


マスコミでは「北朝鮮に行ったら洗脳されてしまう」と言われていますが、彼らの感想はこんな感じです。
日本に戻る前の混乱ぐあいが分かると思いますが(笑)


【討論会(漫画家)】
ちなみに、服装は自由でした。ゲストの漫画家さんはこんな格好をしていましたし。



【討論会(落語家】
同じくゲストの落語家さんは、北朝鮮国内でも和服。



日本海 帰路】



日本海 帰路】


【万景峰から日本をみる】


【新潟港】
Welcome to Niigata



【近づく日本】



【近づく日本】


一部の保守的な人達が騒ぐように、あの国に行くと「洗脳」されてしまうのでしょうか?
確かに、「洗脳」された人はいたようです。私は直接みていませんが、実際には使われていない病院の実際には機能しない設備を見学し、大絶賛している年配日本人女性がいたそうです。

また影響を一切受けない人ももちろんいました。親戚が北朝鮮国内にいるらしく、再会を期待して訪朝したのに、それが叶わなかったとピースボート朝鮮労働党にたいして抗議をしている方も。


参加者の感想も“いろいろ”なのです。
インドに旅行したのがきっかけで、脱サラして山ごもりをする人もいれば、アメリカ旅行がきっかけで英会話スクールに通う人もいる。なかには北朝鮮に行って共産主義に傾倒する人はいるでしょう。傾倒する人がいることは否定しませんが、その人達だけを取り上げて「かならず北朝鮮に行ったら洗脳される」と断言するのは、それこそが洗脳された状態なのではないかと思います。


洗脳を恐れるより、なぜあの国が良く見せようとするのか、強く見せようとするのかを考える方が、解決には近道なのではないでしょうか。