「世界の戦場から」写真展

 
「世界の戦場から」写真展
http://www.k-i-a.or.jp/plaza/
 
期間:2006年7月22日(土)〜8月27日(日)
会場:あーすぷらざ 3階企画展示室
時間:9:00 〜 17:00 《月曜休館》
http://www.jvja.net/EarthPlaza.html
 
 
ちょっと前の話しになりますが、この写真展のプレイベントに行きました。
 
印象に残った話しをいくつか書きます。
 
『伝える』ことについての話しの中で、広河さんがおっしゃっていたことが印象に残りました。「我々が戦争の怖さを伝えようとしても、“戦争”と言う言葉からイメージするものが人によってあまりに違う。私が“戦争”から思い出すのは、手も足もぐちゃぐちゃになって原型を留めないものが混ざって積まれている様子や、頭皮だけが剥け、壁にベタリと張り付いている様子。そういう物を思い出すんです。」
 
 
広河さんは写真家なので、そのような状況に遭遇したら、当然写真を撮るのでしょう。現場が悲惨であればあるほど良い写真が撮れる。しかし、良い写真が撮れることを喜ぶカメラマンはいません。(会ったことがないだけで、存在するかもしれませんが。)確かに、悲惨で残酷な“良い写真”を撮ればお金になるでしょう。ですが、広河さんを始め、戦場を撮り続けるカメラマンは、人一倍その状況に悲しみ、怒っているのです。だからこそ、とり続けることができるのだと思います。
 
以前、JVJAのカメラマンが言っていましたが、彼らの年収はマクドナルドのアルバイトより低いそうです。わざわざ危険な地域に赴き、直視できないような状況を見て、感じて、シャッターを切る。そして得る報酬が、その程度です。
 
 
 
また、石坂啓さんも面白いことをおっしゃっていました。あくまで、私の記憶に残っている内容の抜粋ですが
「私、これまで子供を産んだことを後悔したことはありませんでしたが、ここ数年、『早まった』と思っています。うちの息子は今15歳ですが、息子が成人した時、どんな日本になっているか、心配でならないのです。このままだと、数年で日本は軍隊持ちますよ。徴兵もやるでしょうね。その時は、徴兵なんて言葉は使わないんじゃないですか?もっと可愛い言葉、、、『国際貢献推進活動』とか。簡単ですよ。これで平和が維持できるって言って、反対した人を平和に対する意識が低い、愛国心の無い人だって言えばすみますよ。活動に協力した人を優先的に東大に入れちゃったりして(笑)いや、冗談ではないですよ。事実、低所得の人だったり、失業した人が生活のために自衛隊に入ることもよくありますから。」
 
兵役を『国際貢献推進活動』と名前を変えてしまうだろうとの指摘、面白いです。
 
少し前、某団体のボランティアスタッフ達が、何も疑わずに、とっても無邪気に自分たちの団体を賛美するのを見て、薄気味悪さを感じたのですが、その違和感の理由が解けました。戦争中の日本兵が持っていた(と言われている)日本に対する忠誠心と似てる気がするんです。対象が違うだけ。
 
ボランティア元年と言われる神戸の震災。あの時のボランティアの献身的な働きは素晴らしかったですし、もちろん自衛隊も良い働きをしました。神戸住民も感謝の気持ちを持ちつつ、自分たちの力で復興させるんだと言う意識が強かった。
思いやり、助けあい、そして自主的に動く。そんなことが見直されたのだと思います。
 
その後、NPO法制定などもあり、それまではちょっと変わり者のやるものだと思われていた市民活動が、名実ともに市民の活動になりました。身近で、生活に関わりが深くなっていく。ボランティア活動をする人も増加。今では、学校などでも奉仕活動が授業に取り入れられたりもしているそうですね。
 
もちろん、それ自体はとても良い傾向だと思っています。ボランティアの助けを必要とする人にとってメリットがあるだけではなく、活動をする人にとっても、職場や家族以外の人と関わることで、視野も広がるし、人生経験になります。
 
しかし、ひとたび「良い行い」「平和」の概念、「戦争」のイメージが壊されたとき、ボランティア達の「献身的な行動力」はどこを向くのでしょうか。「家族や地域、日本を愛する心」は何を感じるのでしょう。政府が意図しないところで産まれたボランティア精神が、今、利用されようとしているのではないでしょうか。
どう利用するか。それは名前を変えればいいだけ。『テロ』と呼ぶか『戦争』と呼ぶか、『罪人懲罰』と呼ぶか、『罪人になる可能性のある人への指導』と呼ぶか、どう名付けるかで、行動を起こす人への評価が変わります。
 
 
言葉に対するイメージが無いからかもしれません。広河さんんが『戦争』から連想したように、『戦争』や『平和』『生活』『人生』『命』ちゃんと説明できるイメージを持たなくてはいけないのでしょう。