「ディア・ピョンヤン」

ドキュメンタリー映画「ディア・ピョンヤン」を見ました。
http://www.film.cheon.jp/



内容はもちろん、映画としてもドキュメンタリーとしても
良く出来た作品だと思います。



舞台は、在日コリアンの町、大阪生野区
ここで朝鮮総連の幹部の娘として育ったヤン・ヨンヒさんが、
自ら、父と、北朝鮮に「帰国」している兄達に
カメラを向けた作品です。



韓国出身でありながら北朝鮮籍を選んだ父親の「北」への思い、ゆらぎ。
ヨンヒさんの疑問、漠然とした違和感。
それらが、日本に住む両親の生活と、兄家族のピョンヤンでの生活を
交互に見せながら上手く表現されています。


そしてヨンヒさんの両親への愛情あふれる、「日本に暮らす家族」の映画でもあります。



この映画には、何度もピョンヤンの映像がでてきます。
テレビでしか北朝鮮を見たことの無い人は、この映像を意外に思うかもしれません。 幼い子供達は、祖父に甘え、イタズラをする。ピンク色の子供用の傘がお気に入りの末孫は、傘を持って踊る。冗談を言って笑い合う大人達。「金日成万歳!」など言わなければ、政治的な議論もしない、ごくごく普通の家族の姿がそこにあります。


日朝間には、拉致問題、ミサイル問題、さまざまな問題があり、それぞれ考えるべきことだと思いますが、この映画に出て来るような「普通の家族」が住む国だと言うことを知っておいても損はないのではないでしょうか。



また、北朝鮮の映像が全肯定で映し出されるわけではありません。ヨンヒさんが日本で育ったからこそ持ってしまう違和感が、カメラにも編集にも、しっかり反映しています。


この監督のとっているスタンツは、中途半端というと失礼かもしれませんが、どっちにも近よりすぎず、離れすぎず、、、断言せず、だからといって逃げもせず。しかし、ブレは無い。  
映画のあとのトークショーでも、監督のヨンヒさんは何度も「これについては考え続けているんですけど、分からないんです。考えて行きます。」と発言をしてらっしゃいました。





以前、当事者が当事者を撮る映画について書きましたが、「ディア・ピョンヤン」は、在日朝鮮人在日朝鮮人の家族を撮るという、すごく残酷なことをしながら、とっっっっても良い作品にできています。これこそ、当事者の作品です。


今後、この監督にも注目して行きたいと思います。