「イラク-狼の谷-」
制作はトルコ。そのトルコでは客員動員数でトップになったらしい。だけど他の国で受け入れられるかというと、、、難しいかもしれない。少なくとも日本でヒットすることはないでしょう。
ハリウッド型の勧善懲悪アクション映画を、舞台がイラク、正義の味方のヒーローはトルコ人、悪者はアメリカ人で作ってみたという感じ。アメリカに恨みつらみのある人は、見てスッキリするのもいいかもしれない。
かなり偏った見方をした映画だけど、でも、まあ、これまでアメリカ映画でさんざん悪者“中東のテロリスト”として使われてきたんだから、これくらいの反撃は許されるかと思う。
で、この映画、実際の出来事や事件を取り入れているので、フィクションとノンフィクションの境目が分かりづかい。
この分かりづらさは良い効果と悪い効果がある。前者としては、事件のディテールが分かるということ。実際に起こった事件はニュースなどで海外にも伝わるけれども、それは何時何処で何があったかという事実関係のみ。被害にあった人の人生は語られない。そこをフィクションで補い、被害者の生活や人間性を物語として表現することで、ニュースとは違う伝わり方がするだろう。
だけど後者、悪い効果としては、そういった作り方は制作側も視聴側も感情的になりやすい。攻撃的になりやすい。冷静な判断を欠く可能性がある。
実際にある地名や施設の名前を使っているのだから、慎重になる部分も必要かもしれないなと思う。
]2007年上半期
2007年上半期に見た映画、面白かった順に並べ替えてみた。あくまで面白かった順であって、良い映画順ではないので。
ランク順にしてみると、やわらかフィクション(国内)部門では「舞妓Haaaan!!!」がトップ。。。なんてこったい。犬神家とか上の方にもって来れる人ってカッコイイよな。。。。。。
●やわらかフィクション(国内)
映画「舞妓 Haaaan!!!」
映画「パプリカ」
DVD「ドッペルゲンガー」
映画「フラガール」
映画「秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE 〜総統は二度死ぬ」
DVD「かもめ食堂」
DVD「ファンシイダンス」
映画「どろろ」
映画「幸福な食卓」
DVD「東京ゴッドファーザーズ」
DVD「スチームボーイ」
映画「愛の流刑地」
映画「涙そうそう」
DVD「LOFT ロフト」
映画「座頭市」
映画「武士の一分」
DVD「シュガー&スパイス 風味絶佳」
映画「犬神家の一族」
DVD「DEATH NOTE デスノート the Last name」
DVD「ダメジン」
TV「スウィングガールズ」
DVD「笑の大学」
DVD「いたいふたり」
●やわらかフィクション(海外)
映画「ラッキーナンバー7」
映画「キンキーブーツ」
映画「恋愛睡眠のすすめ」
映画「サンキュー・スモーキング」
DVD「或る夜の出来事」
映画「リトル・ミス・サンシャイン」
映画「ヘンダーソン夫人の贈り物」
映画「トランスアメリカ」
DVD「インファナル・アフェア」
映画「女帝 [エンペラー]」
映画「記憶の棘」
映画「スパイダーマン3」
映画「弓」
DVD「SWEET SIXTEEN」
映画「ソディアック」
映画「マッチポイント」
映画「ドリームガールズ」
映画「ディパーテッド」
映画「プレステージ」
映画「あるスキャンダルの覚え書き」
DVD「幸せになる彼氏の選び方 〜負け犬な私の恋愛日記〜」
映画「ダフト・パンク エレクトロマ」
映画「パフューム ある人殺しの物語」
DVD「グロリアの憂鬱/セックスとドラッグと殺人」
映画「リンガー! 替え玉★選手権」
映画「ハリウッドランド」
映画「BRICK ブリック」
TV「アイ,ロボット」
映画「ブラッド・ダイヤモンド」
DVD「ニュースの天才」
DVD「アタメ」
TV「スパイ・ゲーム」
TV「ロード・トゥ・パーディション」
映画「あるいは裏切りという名の犬」
映画「ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習」
映画「ブラック・ダリア」
映画「上海の伯爵夫人」
DVD「ベルリン・天使の詩」
映画「あなたになら言える秘密のこと」
DVD「炎のランナー」
●かためフィクション(国内)
映画「それでもボクはやってない」
DVD「悪い奴ほどよく眠る」
映画「日本の黒い夏 冤罪」
映画「幽閉者 テロリス」
映画「14歳」
●かためフィクション(海外)
映画「バベル」
映画「みえない雲」
映画「パラダイス・ナウ」
DVD「やさしくキスをして」
DVD「11'09''01/セプテンバー11(イレブン)」
映画「フランドル」
映画「約束の旅路」
映画「トンマッコルへようこそ」
映画「それでも生きる子供たちへ」
DVD「ミュンヘン」
映画「ラストキング・オブ・スコットランド」
DVD「十二人の怒れる男」
映画「ボビー」
映画「低開発の記憶-メモリアス-」
●ノンフィクション(国内)
映画「蟻の兵隊」
DVD「ピンクリボン」
●ノンフィクション(海外)
映画「ダーウィンの悪夢」
DVD「ブラック・セプテンバー/五輪テロの真実」
映画「コマンダンテ」
映画「不都合な真実」
映画「スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー」
映画「ニーハオ 蠟小平」
ついでに、
■なにげに良かった映画
「フランドル」
フランドル地方に住むバルプとデメステル。二人は恋人なんだけど、もひとつ心が通じ合わず、孤独を感じている。そんな中、デメルステは出兵。バルプはつぎつぎと村の男と関係を持ち、家族とは折り合いが悪く、精神的に追いつめられて行く。デメルステは戦場で少年兵を撃ち殺し、仲間と一緒に一人の女性をレイプ、民間人を殺ろす。
カンヌで審査員グランプリを受賞したわりにはあまり話題にならなかった(私が知らなかっただけ?)。でも、なにげに良かった。テーマも映像もかなりグロテスクなんだけど、それをたんたんと無機質に描いてくとこが良い。
登場人物二人の抱えている問題や環境はまったく違うものなのだけど、突きつけられる現実から逃げたくても逃げられない、選択できない状態ということは共通している。二人の行動はとっても愚かで共感はできないけれど、なんだか心に残る作品だった。
■脚本が良い映画
「ラッキーナンバー7」
はじめ、まるでオムニバスのように、まるっきり別の3つのストーリーが展開する。ギャング映画、SFサスペンス、ラブコメディー。これが、最後の30分ですべて繋がってしまう。この予想外の展開、してやられた感は気持ちいい!!!会員になってる名画座でやっていたので、2度も見てしまった。2度目は最後の結末が分かっているので1度目は気がつかなかった伏線が見えて楽しめた。なんで1度目に気付かなかったのか悔しさ倍増。2度も美味しい映画だった。
主演のジョシュ・ハートネットとルーシー・リューのやり取りが可愛らしくって、それも良い。
で、この映画、製作総指揮が7人もいる。総指揮が7人。なんなんだろう??謎が多い映画だ。
■ 笑えた映画
東京のうだつがあがらないサラリーマンが、大好きな舞妓はんと野球拳をするため、ただそれだけのために、怒濤の努力と根性で大人の階段を駆け上がる話し。「ボラット」と違ってバカな私にも笑えた。
舞妓っていい素材を見つけたなと思う。見た目にも華やかだし、落ち着いて見直すと絶対笑えるメイク。仕草や話し方、舞妓世界の常識も、外の世界から見るとちょっと可笑しい。舞妓が出てきただけで、フツウに笑えるはず。でも、舞妓を笑うんじゃ映画としての面白みがなくなってしまう。そんな映画はきっと面白くない。そこでそんな「否定は出来ないが正直なところ奇妙な舞妓」を熱狂的に愛する舞妓オタクを主人公にして、彼を「面白く」したってのが、面白いんだよなーーと。と、そんなことはどうでもいいんでしょうが、、。
私のお気に入りのシーンは、市長に怒鳴り込みに行くところ。顔のクローズアップが続くから「例のブリーフしかはいてないんだろなー」と思ったら例のごとく、、、ってとこです。はい、クダラナイです。。。
「恋愛睡眠のすすめ」
これも笑った。ミシェル・ゴンドリー監督、ガエル・ガルシア・ベルナル主演のロマンティックラブコメディー(?)
ストーリーはいったってシンプル。妄想癖のあるさえないデザイナー(ガエル)がアパートの隣人に恋をするけど、なかなか思いが伝わらない。あれこれアプローチをするんだけど、彼女からはいまひとつ良い反応がなく、、、。
次第に妄想の世界に浸るようになるんだけど、その夢の世界がとってもカワイイ。段ボールで出来たキッチュなかんじなんだけど、そこでの二人はとっても自由でのびのびしてる。途中から見てる方もどっちが現実で夢か分からなくなるんだけど、そういう作り方も面白い。爆笑というより、ニコニコしちゃう映画だった。
■泣けた映画
「みえない雲」
もし現在、チェルノブイリと同レベルの原発事故が起こったら、、、という話し。基本的にはラブストーリーなんだろうけれど、かためフィクションに分類した。見ていて辛くなる映画なんだけど、希望を失わないでいてくれるので絶望的ではない。
原発事故により、近郊の町はパニックになる。高校に通うハンナは幼い弟と共に避難するため駅に向かって自転車を走らせるが、途中、弟は車にひかれ死亡する。通りがかった家族の助けでハンナは駅にたどり着くが、汚染された“雲”は近づいてきて、、、。
ハンナは被爆者としての人生をおくることになり、家族の死、差別、孤独なんかを乗り越えなければならない。登場人物は、皆、よくも悪くも人間らしく、キレイごとでは済まされない“現実”を抱えている。
作り方に寄っては恐怖映画になってしまうところを、ラブストーリーという形で軽い見せ方をしているのは、上手いというかなんというか。。。
重いテーマを軽く見やすく作れる人は、凄いなーーと思う。
「涙そうそう」より、泣ける。ただ、ストレス解消に泣ける映画を見るのが流行らしいけど、この映画はそういう効果は期待できないな。。。。
「バベル」
GW、帰郷先の大阪で映画「バベル」を見た。
伝えること 伝わること
繋げること 繋がること
そんな話し。
別に感動する話しでも涙する話しでもない。
ただ、深く“納得する”話しだった。
この映画を撮り始めた頃、監督は「コミュニケーションの難しさ」を
撮ろうとしたらしい。
人はそれぞれ違う生き物なので伝わり難い。
まして国や文化、宗教が違うと絶望的だ。
でも、製作していくなかで変わったそうだ。
監督はインタビューでこんな話しをしている。
「本当の境界線は言葉ではなく、私たち自身のなかにあると気付いた。人を幸せにするものは国によって違うけれど、惨めにするものは、文化、人種、言語、貧富をこえて、みんな同じだ。人間の大きな悲劇は、愛し愛される能力に欠けていること。愛こそが、すべての人間の生と死に意味を与えるのだ。」「『バベル』は“どこから来たのか?”ではなく、“どこに行くのか?”の答えになった」
(オフィシャルHPより抜粋)
レビューを見ると、絶望的で暗い映画と捉えている人が多いようだ。私は“どこに行くのか?”行き先を戸惑いながらもボンヤリ照らしている希望の映画だと思った。
「パラダイス・ナウ」
舞台はイスラエル占領地のヨルダン川西岸地域の町ナブルス。ときおり飛んでくるロケット弾による地響き、唐突に封鎖される道路。車の修理工で働く青年サイードとハーレドは、将来に対する希望も持てず、たんたんと占領下の日々を暮らしている。
そんなある日、自爆志願者をつのるパレスチナ人組織の交渉代表者から自爆攻撃の遂行者に選ばれたことを告げられる。
二人は当然、名誉あることとして受け入れます。爆弾をビニールテープで腰に巻き付け、髭をそり落とし、イスラエルで浮かない洒落たスーツに腕を通す。
はじめ、主人公のサイードは多少の戸惑いはあったようです。本当に実行すべきなのかと友人ハーレドにだけは漏らします。
逆にハーレドは名誉なこととして喜んでいます。
そして実行日当日、二人ははぐれてしまい、相手を探して自分たちの町を丸一日駆け回ることになります。共に生活をしてきた場所や人々と会い、二人の思いは変わってゆく。
二人ともそれぞれ一日かけて町をまわったことで、自分の本当の意思が分かったのでしょう。相手や家族や町を愛しているからこその決断だと思います。
なんか、すごく感想が難しい映画です。
「約束の旅路」
1984年、エチオピアのユダヤ人をイスラエルへ移送する「モーセ計画」。イスラエル主導で行われたこの作戦で8千人の命が救われたと言われるが、その旅路、疲労や飢え、襲撃や拷問で命を落とした人は4千人にものぼる。
エチオピアで家族を亡くし、母と二人でスーダンの難民キャンプまで歩いて来たエチオピア人少年は、ユダヤ人と偽り、ひとりイスラエルに“帰還”する。
シュロモというユダヤ人の名前をもらい、清潔で食べることにも困らない生活が始まるが、待っていたのは良いことばかりではなかった。エチオピア系ユダヤ人への差別は根深い。
はじめは粗暴だったシュロモも、理解のある養父母に出会い、しだいに心を開いて行くが、故郷への思い、残してきた母への思い、そしてユダヤ人であると嘘をつき続けることに苦しみ、もがく。
この映画をみると、ナショナリズムだの愛国心だの美しい国だのという言葉を軽々しく発することが、どんなに恥ずかしい行為か、理解して発しているのか、と思える。
イスラエルで真っ白な靴下に足を入れ、清潔な服に着替える。その日の夜、すり切れボロ布のような自分たちの服が焼かれているのを、シュロモ達はじっと見つめていた。
滅菌の意味で焼かれたのだろうが、山と積まれた大量の民族衣装を一度に焼き払うという行為。ホロコーストを連想したのは私だけだろうか。
自分の故郷の服を焼かれ、西洋の靴を履き、他国の言葉を学び、シュロモはユダヤ人としてイスラエルで生き続けなければいけないのだ。それ以外の選択肢はない。シュロモの3人の母親はシュロモに「生きる」こと「活きる」ことを求めた。それがシュロモを支えているのだろう。
この映画を作ったのはルーマニア出身のフランス人、ラデュ・ミヘイレア二ュ監督。日本は「俺は、君のためにこそ死ににいく」なんて映画をつくってるようじゃ、文化面でも遅れるんじゃなかろうか。美しくないな。(「僕は、君の…」は見てないけど。。。。)
「ラストキング・オブ・スコットランド」
映画「ラストキング・オブ・スコットランド」を見た。
1970年ウガンダ、クーデターにより政権をとったアミン大統領のお話し。主治医であり側近のスコットランド人医師の視点で描かれている。
映画の冒頭、事実に基づいた話しだと字幕スーパーがでるけど、かなり脚色されてる気がするな。たぶん、主人公のニコラスも実在した人物ではないよね。
この映画の原作は小説の形でかかれてるし
「スコットランドの黒い王様 」
ジャイルズ フォーデン (著), Giles Foden (原著)
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E3%81%AE%E9%BB%92%E3%81%84%E7%8E%8B%E6%A7%98-%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%BA-%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%87%E3%83%B3/dp/4105900102
あくまで白人青年医師の視点で描いているので、もしかしたら、違和感を持つ人もいるかもしれないな。
アニミズム信仰や悪魔払いの儀式は無学な人々の愚かな行為として表現される。
アミン元大統領も、ご都合主義で自分勝手。死に怯える子供じみた人物とされる。愚かなのはアミンだけでない。ウガンダ国民は深く考えることなく、気に入らなかった前政権を倒したアミン大統領を拍手で迎える。
極めつけは、黒人医師(この人は賢い)の発言。この黒人医師は主人公のニコラス医師を軽蔑していたのにも関わらず助ける。そして助ける理由を訊かれて「君は白人だから、、、」。この台詞の後には「白人だから、世界にアミン政権の内情を伝える機会をえられる」という意味と「白人だから、今の状態を正しく理解し、しかるべき組織に伝えるだけの賢さをもっている」と言う意味があったように思う。それだけ、この黒人医師はウガンダに黒人に絶望していた(と描かれている)んじゃないかな。
私、個人的には黒人が白人に比べて愚かだとは思っていないので、この映画は差別的な表現が多いなと感じたけど、、、、それが、そんなに不快には感じなかった。
主人公はスコットランドで何の不自由もなく育ち、親の期待が嫌でウガンダに逃げたぼんぼん青年医師なので、まあ、そう見えても仕方がない。
それに、無知で素直なぼんぼん青年だからこそ、アフリカが抱える問題をシンプルに、素直に、まっすぐ見ている。この視点、これはこれで大切なこともあるし、また、私たちはこの視点で見がちなんだと認めるべきなのかもしれない。
「映画を見ました」と言う気分にさせてくれる作品でした。